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「ファスト映画」報道に伴い、日頃感じていた事をつづる

ファスト映画騒動 未分類
この記事は約9分で読めます。

ファスト映画で全国初の逮捕者

このような一報が2021/6/23 14時頃にYahoo!ニュース等で報じられた。

ファスト映画投稿で逮捕、全国初 著作権法違反容疑、宮城県警(Yahoo!ニュース)

逮捕に踏み切るということは確たる証拠を掴み、不起訴とならずに立件までこぎつける準備が整っている状態だとは容易に想像ができる。

この事件に限らず刑が確定するまではあくまでも容疑者なので、諸々確定するまでは1個人(ヤフーのコメント欄など)やマスコミも含めてあーだこーだと述べる事は好ましい事ではないと感じる。近年若者を中心としたネットリテラシーの不足、モラルの低下が目立つ事件が多いですよね。「ネットいじめ」という単語がWikipediaにある時代です。

件の詳しい内容も今後明らかとなっていくニュースサイト等にお任せするとして・・・。

筆者もこの「ファスト映画」と呼ばれている多数の類似コンテンツがYoutube上でおすすめ表示をされて、視聴をした事があります。

内容を見てみると、自身も動画コンテンツをアップロードしているという立場から述べて、とても見やすく、聞きやすく、うまく時間内にまとめあげられて洗練されている、と感じてしまったし、事実再生数もウン十万ウン百万再生は当たり前、くらいの人気コンテンツに成長していたように記憶している。

しかし、筆者はそれらの動画を見て、強く疑問を感じた事がある。

「この動画見たら…映画見なくて良くない?」

ということです。当然映画の権利(ここでは広義的に捉えて著作権)は制作会社や放映する権利を持っている企業に帰属しますが、今回問題となってしまった映画要約チャンネルは、あらすじ紹介どころか、オチ・結末まで見事にまとめ上げているチャンネルも多かったのです。

動画のコメント欄を見ると、自身の感じていた感想とは全く異なって、「オチまで言ってくれるからありがたい」だとか、「助かります」みたいな感謝寄りのコメントであふれていたりするのです。

そこには確かな視聴者からの需要があり、続々と類似テーマのチャンネルが増加していきました。

よく比較されるテーマとしてですが、Youtubeにあがっているゲームに関しては近年では権利者からYoutube収益化等が認められる(策定されているガイドライン遵守の上!)というケースも増加し、一概に全てがダメという話でもありませんが、昔のゲームカセットや音楽CD、映画DVD、書籍、という商品の販売形式から、ネットや動画共有サイト等を利用したデータで済んでしまう共有化が簡単で身近となって、ことさら難しくなってしまったのは著作権の問題です。本当に難しい。

許可されているゲームでもだめだと感じるパターン

ストーリー重視のゲームは動画収益化を許可をしていないパターンがほとんどだと思いますが、仮に許可していた場合、視聴者もYoutubeで動画を見るだけで満足してしまって、自身も購入して遊んでみよう。とはほとんどならないわけです。

このようなパターンは序盤の触りだけ見てみたり、ある種視聴者側の自制が必要だと言いますか…そもそも論でストーリーまでまるっと配信は良くないと個人的に思います。

他では、ホラーゲームを爆笑しながらプレイしているパターン。

ホラーゲームを作っている制作者は、プレイヤーを驚かせようと考えてゲームを作っていますし、仮に有名実況者さんに対して配信を許可していたとしても、怖がらせているポイントでは心から怖がって欲しいと願っているはずです。ちゃんとプレイしていても驚けないようであれば制作サイドの力量不足という話にもなりますが、どうかなって感じるのはホラーゲームで笑いを誘う配信者さんです…。その様子を見ても「よしこのゲーム買おう」とはならないのです。

動画がとても面白いから配信者さんのファンにはなりますが、「え、制作者さんはそれ(ホラーで爆笑)でいいの?」と色々と考えてしまうことがあります。だから、自身のチャンネルがつまらないという理由にもなりますがそれはさておき。

情報を発信したりするうえで欠かせない画像や映像、もっといえば文章などの文字列にさえも著作権というものが存在しています。例えばブロガーは他所のサイトから情報を紹介する場合には、引用元を明らかにしたり、専用のタグで該当文章を囲い検索エンジン等からも「流用や盗作コンテンツ」と誤認されないようにする工夫が必須となります。

また、筆者が頻繁に目にして他で気になっている動画のジャンルとしては「切り抜き動画」です。ちゃんと権利者の許諾を得ていますか。

切り抜き動画について

最近こんな動画がよく表示されませんか?

大元の人気Youtuberの動画やテレビ放送などの映像を、権利を持っていないにもかかわらず適宜切り抜いて再編集を行って投稿する、といったものです。

視聴者視点でいえば、長時間に及ぶライブ放送などのうち、重要と思われるポイント要点をまとめて短く編集してくれているため、時間の節約にもなり非常に見やすいです。そしてそれらを行っている投稿者さんは動画編集がとても上手です。

そんな素晴らしいクオリティを誇る切り抜き動画についてですが、なんだか今回の映画の件にも似ていますよね。

争点となるのは「権利者の許諾」を得ているかどうか。

収益はどこにいっている?

Youtubeでは元の権利者は動画が無断で利用されている場合などへの対処に、完全にブロック・権利者に行き渡るよう収益を分配、といったContent IDと呼ばれる仕組みが用意されています。

Content ID の仕組み(Youtubeヘルプページ)

明らかに著作権を侵害している内容の動画であっても、それが残って再生され続けているという場合、権利者が切り抜きを認めているというパターンがとても多くあります(視聴者は分からない)。再生による収益を元の権利者と再分配していたり、有名実況者さんが無条件に認めているというパターン(自身の切り抜き動画について語られている)を聞いた事もあります。(がめつさの無い方なので、ファンである個人としては収益を全て没収して、当人が受け取れる設定にして今後の活動に役立てて欲しい)

他にも、明らかに権利者ではないユーザーが長時間の著作権のある楽曲を、楽曲を聞くためだけのコンテンツとして提供しているパターン。そのような動画がいつまでもYoutubeに残っているし、なんなら広告が表示されたりもするのです。(この場合、広告収益は権利者に分配または全ていっていると思われる)

これらは多くの場合ContentIDの仕組みが導入されて以降、広告による収益が正しく権利者に行き渡るように、権利者を守る上で活用されていることによる影響だと言えます。

別の見方をすれば、うっかりと著作物を利用してしまって動画内の一部音声が自動で無音化されてしまったり(以前まではこのようなことが起きていた)する事もなく、動画のクオリティを維持したまま、また、権利者に動画の削除を要求されることも無く、投稿者も特に対応することも無く双方にとって平穏が保たれる、そんな安全装置のような役割を担っているようにも思えました。

しかしながら昨今、明らかに権利者ではない動画を投稿するチャンネルが急増し、1ハードコアユーザーとしてモヤモヤする気持ちになっていました。どうしてこの動画は消されず残っているんだろう、しかもたくさん再生されているんだろう、著作権はどうなっているんだと。

今回の件で筆者自身もはっとしたのは、よくよく考えてみればわかることなのですが、ContentIDはYoutube側が無条件に登録するようなものではなくある種の特許申請のようなものです。

ContentIDによって検出される事によって、投稿者自身が権利問題に気づくこともままあります。例えば筆者はあるオープンワールドゲームの動画を投稿した際に、ゲーム内の店内で流れていたBGMに利用上の問題があり音声が該当部分のみ自動で切り取られると言うことがありました。

逆に言って、ContentIDが登録されていない著作物の利用にはなんら問題が無い、とは決してならないのですよね。

これは至極当然であり、詳しいことは未だ分かりませんが、今回の事件ではContentIDの登録が無いコンテンツの再利用をしてしまっており、その収益は権利者の手元にもいかず丸々逮捕者の元へ渡っていた、ということになるのでしょうか。

著作権法違反容疑として逮捕者が出ました。著作権法違反は親告罪なので、権利者自身が訴えなければ罪は成立しません。特定条件下においては非親告罪とする法改正が行われておりました。大変失礼致しました。

日本の著作権法における非親告罪化(Wikipedia)

しかし今回業界団体の活動によって大きな動きが発出したか、はたまたここまで泳がされていただけなのか・・・。

当人の言い分としては、YoutubeのContent IDなどの仕組みによって権利者に動画再生の収益が再分配されているから、(言い換えて許諾を得ているので)自身のチャンネルは著作権上の問題は無い。という主張を展開するのではないかと想像していますが…。前述の通り、問題が起こりうるとすればContentIDの登録の無いコンテンツ利用の方に問題がありそうです。

別の視点では

実際問題、上記のContent IDによって「ブロック(コンテンツの利用を認めません)」ではなく、「広告収益の再分配が行われていた」と仮定した場合、権利者が「映画コンテンツの映像の一部を使って収益化をしても良い。」と言っているのと同義と受け取れてしまうわけで、このパターンで訴えられているということではきっと無いですよね。それなら、だめなんだったらブロックで良かったではないか、となるわけですので。

このような行為が良いか悪いかでいえば当然、おもいっきり著作権法違反に該当するので良くないことだと感じています。

それは映像を使用していた事、というよりも…「あらすじや結末まで要約されて、本編を見る必要が無くなってしまった」から、という事の方が大きな問題だと感じています。

事実、いくらゲーム配信チャンネルがゲームを配信していてその配信を見ても「自分ならこのようにプレイする」「自分ならこの選択肢を選ぶ」といった自身の楽しみ方の伸びしろのようなものが何かしら残されていて、ある程度は知見できてしまっても、それでも「面白そうなゲームだ。自分も買おう。」となるわけです。更に、ゲームを購入する動機付けとして、開発者さん側は圧倒的にリアルな映像のPV等に注力しがちですが、プレイヤーが求めている購入前の情報は実際のプレイ風景だったりします。

映画の場合、出演されている俳優・女優さんが好きで画面で動いているのを見るだけで良い、だとか、美麗な映像美をただ眺めているのが好き、という方もいらっしゃるかもしれませんが、ほとんどの人が味わいたいのは「ストーリー」への感動とかだと思います。

なので、著作権法上守られている「映像や音声」が使われていた事よりも、「結末」を公に知らしめてしまったことによる、以降の購買意欲・販売の促進へと続かないマイナス面への影響が大きいような気がしました。ストーリーも著作権の範疇に含まれるのかはわかりませんが、ブログなどの文章にも著作権は適用される以上、シナリオももちろん含まれるという認識です。

算出された被害額は950億円余りだとされ調査を開始した団体が発言をしました、初めてこのファスト映画に関するニュースが報道されてから、わずか2,3日というスピードで今回の逮捕となりました。実際にはすべての準備が整った時点ではじめの報道による公開を行ったのでしょう。

迷惑系Youtuber、炎上系、数々のジャンル名称が用意され、いくつかは事件にもなり、今回は「ファスト映画」系チャンネルへのけん制が行われたというわけです。

ファスト映画のような内容の動画が今回の件で最終的に認められない、とつっぱねられた場合、他のジャンル、例えば書籍の要約チャンネルなどへと伝播していくきっかけになり得る大きなニュースだと思いました。あなたの動画チャンネルは大丈夫ですか?

そして、そんな中でるっち自身は収益化条件を全く満たしていない弱小チャンネルであるので雲の上のお話なのでした!